COLUMN

佐賀の森林がもたらす豊かさ

佐賀県は、天山や脊振山をはじめとした美しい山々が連なり、その多くが豊かな森林に覆われています。これらの森林は、単なる風景ではなく、私たちの暮らしや未来を支えるとても重要な役割を担っています。

佐賀市富士町にある北山ダム

森林は、「土砂災害の防止」「水源の涵養(かんよう)」「レクリエーションの場の提供」「二酸化炭素の吸収による地球温暖化の防止」など、数多くの機能を持っています。また、木材や山菜やきのこなどの林産物の生産や、生物多様性の保全、さらには地域の文化や信仰にも深く結びついており、その働きは多岐に渡ります。

基山町 大興善寺の紅葉

こうした森林の持つ多面的機能は、貨幣評価できるものだけでも日本全体の森林では年間約70兆円、佐賀県では年間約3,793億円と評価されています。これは県民一人当たり年間約44万円に相当する恩恵を森林から受けていることを意味しています。

自分の家の蛇口から出る水道水の源が山にあること、綺麗な空気が森林によって保たれていること、渇水や洪水を緩和していること、災害から守ってくれていることなど、普段は意識しませんが、森林は私たちの生活に密接に関わっており、安全で快適で豊かな暮らしを支えてくれています。

鹿島市 祐徳稲荷神社奥の院から見た風景

しかし、現在は森林の手入れ不足による荒廃森林の増加が問題となっています。森林(特にスギ・ヒノキなどの人工林)は放っておくと荒廃し、その機能を十分に発揮できなくなります。

荒廃した森林は、混み合っている木を間引きする「間伐」という作業を行うことで、森林の中に日光が入り、林床(森林の地表面)に様々な植物が生えてきます。このことで、多面的機能を発揮できる森林に回復し、災害に強い山へ転換することができます。

皆さん自身が、またはご家族が所有している山があれば、その山の場所はどこか、森林はどのような状況か調べてみませんか。そして、手入れをして森林を活用してはいかがでしょうか。まずは所有する山が所在する市町の林業関係の部署や森林組合に相談してください。

また、山を所有していなくても、山に散策に出かけてみるだけでも、空気の清々しさ、鳥の声、木漏れ日の美しさといった、山の持つ魅力を感じることができます。
これからの時代に必要なことは、私達は森林と共に生きているという意識です。
小さな関心が、やがて森林を守る大きな一歩となります。

唐津市 鏡山展望台から見た虹ノ松原

佐賀の森林には、私たちの未来を豊かにする力があります。
その存在を知り、守り、次の世代へつなぐこと。
それが、現代に生きる私達の大切な使命です。